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異界の掲示板

願いを叶える不気味な掲示板

「へんな、けいじばんがあるんです。見てきてください。おとなは見ても、気づいてないみたいです」

その依頼文は、子どもの字で書かれた便箋と共に、ナズナのポストに入っていた。
差出人の名前はない。ただ、文末にこう書かれていた。

ぼくは、もう、ねがいをかきました。

調査開始

郊外の新興住宅地にある小さな町。
そこに、どこの組織の管轄でもない掲示板があった。木製。古びているが使われている痕跡がある。

画鋲の穴、破られた紙の痕。そして子どもの筆跡で貼られたメモ。

せんそうがおわりますように
かぞくが、ずっといっしょにいられますように
ほんとうのかいじゅうがでてきますように

全て子供の手によるメモだった。

観測される現実の変化

偶然とは思えない。 世界が“子どもの願い”に微細に合わせて動いている感覚。
そしてその中心に、この掲示板がある。

返信の痕跡

裏側に回ると、黒く塗りつぶされた文字列。

<code>RE: </code>

これは「返信」が存在していた痕跡だった。

類似記録と歴史

時代も場所も超えて現れる“願いを叶える掲示板”。
それは一体何なのだろうか。

依頼者との再会

ナズナは依頼が合った掲示板の前で車で張り込みをする。夜に少年が人の目を盗み現れた、依頼の差出人の少年だった

「あなたが……来てくれると思ってた」
「ほんとうは、もっとすごいこと書こうとした。 『ぜんぶの人がしあわせになる』とか『死んだおかあさんに会いたい』とか…… でも書けなかった。本当に“何か”が動く気がして。」

少年が握っていた最後の紙。

──この世界を、もっときれいにして。

その言葉は、叫びではなかった。祈りでもなかった。
ただ、心の奥に沈んだままの、まだ誰にも染められていない“純粋な感情”だった。

ナズナの選択

ナズナは紙を静かに受け取り、代わりに自分の手で一枚の紙を貼った。

この掲示板は、この地域から消えてください。
この時代から、存在を消してください。

翌朝、掲示板は消えていた。地面から痕跡ごと。

ナズナ私的メモ

これは、言葉のだけで“現実のコード”に触れてしまう場所。
恐ろしいのは、それがどの時代にもあったこと。
文化も、宗教も、構造も超えて。そして、全くの出所がわからない事
これは願いを叶える装置ではない。
これは、“人が世界を無意識に書き換える手段”の残響。

この記録は封印指定とする。
似たような掲示板を見かけた際は、決して“願い”を書かぬこと。