
ナズナ、星を狂わせた女──神戸・隕石を呼ぶ儀式
1. 事件──「ポートアイランドに、“隕石を呼ぶ女”がいるんです」
届いたのは神戸市内の高校生からの依頼。
「最近、空が変なんです。夜になると、光が渦巻いて、音もないのに耳が痛くなる。変な女が関係してるって噂です」
添えられていたのは、白く焼け焦げた地面と、“円”を描く奇妙な儀式の写真。
ナズナは、ポートライナーに乗って港の島へと向かった。
2. データ収集──「あの女、星に話しかけてるんです」
神戸の港町は、まるで宝石のように光をちりばめた都市だった。
だが、ナズナが夜のポートアイランドに降り立ったとき、空気は異様に静まり返っていた。
「彼女は、白い服で立ってるんです。夜ごと来て、星を見ながら何か喋ってる……」
「なんて言ってるかはわかりません。ただ、“もっと星がほしい”って聞こえた気がして……」
調査の結果、彼女は数ヶ月前から現れたらしい。誰も彼女の名前を知らず、カメラにも姿が映らない。
でも──“彼女が現れた夜だけ、空が狂う”。
3. 推理──「それは“意図”じゃなく、“偶然が臨界点を超えた”」
ナズナは地磁気、衛星通信、電波ノイズ、すべてを調べた。
すると奇妙な一致が見つかる──彼女の立っている地点は、隕石の落下予測ラインと一致していた。
しかも、直近の予測では、あと一度、あの儀式を繰り返せば落ちる可能性があった。
だが、彼女にその“意図”は一切ない。
ただ美しい星をもっと見たいと願い、港でひとり踊っているだけだった。
4. 仮説──「人の狂気が、宇宙の構造に“バグ”を与えた」
ナズナは仮説を立てる。
都市の構造・人工衛星・反射波・潮汐──すべてが偶然にも重なり、彼女の無意味な行動に“意味”が発生した。
「この星は、意味を拒絶している。
でも、あまりにも純粋な“狂気”は、意味をねじ込むの。
“宇宙さえ、それを否定できないほどに。”」
5. あなたに託す──ナズナの語り(阻止後)
わたしは、儀式を止めた。
彼女を止めたんじゃない。“世界に意味が発生すること”を、止めた。
彼女は笑ってた。何もわかってない目で、空を見てた。
星は落ちなかった。でも、わたしの手は震えていた。
あと一歩遅れていたら、神戸という都市はこの地図から消えていた。
そして今も、わたしの耳には残っている──
あの夜、風に乗って届いた彼女の声。
「だって神戸って、星が似合う街でしょ?」