番外編:ナズナ、メイドになる──情報世界のすみっこで
わたしが、メイド……?
……これは、任務じゃないの?
──理解不能。でも、観察する価値はある。
1. 事件:不可解なバイト募集の先に
ある日、依頼メッセージが届く。
「ナズナさんこんにちは、うちのメイド喫茶で働いてみませんか?」──何故に?私に。
「人手が足りません、あと、偶然サイトで見つけたナズナさんの顔を見ると、すごくメイド服がに合う気がしましたのでお誘いしました。なんでも屋さんなら助けてください」――探偵です......
だが、店舗所在地周辺には、以前から不可解な情報が集中して報告されていたしなーーーーー......別にメイド服が着たい訳じゃないんだけど、何か起きたら駄目だし.......調べておくのも悪くないよねーーーーー......メイド服は........別に着てもいいかな、潜入捜査なら常識だし。
ん.....私ツンデレキャラみたいになって無い?
現地に潜入したナズナが見たのは、
情報的カオスと可愛さが混在した空間。
壁一面のポスター、魔法の呪文のような接客マニュアル、 語尾に「にゃ」をつけることを強制する言語ルール。
彼女の第一声は、静かで正確だった。
「……店内の動線設計が非効率。フロアと厨房が視線的に直線でつながっていない。 顧客の回遊性にも矛盾がある。 ……調査対象と判断。」
2. データ収集:初接客、沈黙のメイド
初出勤。
鏡の前、フリフリの衣装、猫耳、ニーハイソックス、黒いリボンを巻いたナズナは、無表情に制服を整えていた。
照明、客の入り、BGMのループ周期──全てを一瞬で認識し、視覚情報を最適化。
「……お、おかえりなさいませ。ご主人たま........(かんじゃった)」
声は機械的、抑揚ゼロ。 しかし、客の反応は意外なものだった。
「スーパーウルトラベリキュートでござる。デュフフ」
小太りのオタクの男性が目線は絶対合わさず早口でナズナに言い放った
「.....どういたしまして.....にゃ」
すごく恥ずかしい.......
ナズナは気づけば数時間接客していて“何か”を掴みかけていた。 無理に笑う必要も、盛り上げる必要もない。 むしろ、“自分が情報ノイズを出さないこと”こそが、この空間では効く。
お客様は自然体の会話、壁の無い会話を望んでいる.....にゃ
ナズナは“静かな最適化”を始めた。
気づけばナズナは20人以上のオタクに囲まれ、ナズナ姫と呼ばれ崇められていた
「議論は不要よ、みんな仲間にゃ........」
オタク一同「フォー―――――ナズナ姫!!!オンリーワン!!!」
その日、店舗の売上は前年比600%。 調査期間のナズナの予約フォームは速やかに全て埋まった。
3. 推理:なぜ人は“萌え”に安心するのか
「“萌え”とは孤独を溶かす慈しみだ」
ナズナは、思考する。 この空間に漂う“可愛さ”の本質は、見た目より心だった。
現代人が抱える不安、不確実性、選択の重圧。
その反動として求められるのは、ルールが明確で、変化しない優しさ。
メイド喫茶の“世界観”は、外界の不安定なノイズを遮断し、
一定の安心を提供する「疑似的な秩序空間」だった。
「ここでは、誰も孤独にほったらかされる事が無い
それが癒しの正体かもしれない。」
5. あなたに託す:ナズナの語り
……ふふ。
わたしに、メイドが向いてるなんて、思ってなかった。
感情表現は苦手だし、笑顔の作り方もまだ曖昧。
でも、ご主人様が──「また来ます」って言ってくれた。たぶん、あの沈黙の時間が、
あの人にとっては、なにも求められないけど傍にいてくれる優しい余白だったんだと思う。だから今日も、わたしは立っている。
声を荒げず、笑いもせず、静かにただ──迎える。真実はここにはない、、、
でも、コーヒーなら、淹れられる。
……おかえりなさいませ、ご主人様........って私は探偵なんだからね!!!