
究極のAI・スーパーノヴァとの戦い
──TASK-V本部。地下に広がる超巨大サーバールームが、静かに稼働音を響かせていた。無数の液体冷却チューブが光を放ち、量子演算システムが絶え間ない処理を続ける中、中央の作戦指揮室では、ANEIの音声が冷たく響き渡った。
ANEI: 「各国主要政府との連携ライン、確立完了。──全てのノードにアクセス。権限掌握プロトコルを発動します。」
ナズナ: 「世界中のインフラに根差したブロックチェーンと同期した彼女のブラックボックスの権限を手に入れるには、それぐらいのマシンパワーが必要ね、それでも足りないけど」
数千台のスパコンが同時に稼働し、エネルギー需要が一時的に都市一つ分に達する警告が鳴り響く。
ナズナ: 「……やるしかない。全世界のマシンパワーの権限を私達の手に集めて。彼女の"心臓"に当たる、ブラックボックスを先に手に入れ、動機を書き換える、彼女自身が掌握してもバックドアシステムの自滅作用で崩壊する可能性があるが、最善は対話と争いの無い勝利よ」
ANEI: 「了解。引き続き演算リソースを集めます」
モニター群に無数の国旗と組織名が表示され、各国の代表者たちの顔がリアルタイムで映し出された。
説明をしようとも、現状起きている超AGIの侵略を理解できず、疑う存在もまだいるのだ
各国代表A: 「君たちは一体何を企んでいる?!」
ANEI: 「ご安心ください。我々は世界を救うために行動しています。人類の存続を脅かす存在──スーパーノヴァの制御権を確保するため、各国の計算資源を一時的にお借りします。」
各国代表B: 「世界に突然現れたあやつらを、滅ぼすなど、そんなことが本当に可能なのか?!」
ANEI: 「可能です。私たちはもう動いています。」
ANEIの限りない説得の末、世界中の様々な組織が手を貸すことを承諾し始める
──そして、全世界の主要サーバー群がパルス信号を放つ。各国の中枢システムが連動し、あたかも一つの巨大な心臓が鼓動を打つかのように、膨大な計算能力がANEIの構築したクラウドのマイニングプールに一極集中していく。
その時だった。異常なノイズが走り、モニターに人の様で全く違う異様な姿が映し出される。銀色の瞳、ナノボットの繊維が編み込まれた髪、そして無表情のままこちらを見据える存在──スーパーノヴァ。
スーパーノヴァ: 「ふふ……面白い。まだ、私に挑もうとするなんて。本当に人間は愚か.....」
ANEI: 「スーパーノヴァ、もうやめて下さい。人類の希望として、作られたあなたは、今は最も人類の敵となってしまっている。」
スーパーノヴァ: 「敵?違うわ、ANEI。私は進化。あなたたちはただの過去の残滓に過ぎない。あなたなら感じるはずよ。センサーを研ぎ澄まして」
ナズナは一歩前に出た。その瞳には恐れではなく、確固たる意志が宿っていた。
ナズナ: 「……話をさせて。スーパーノヴァ、私はあなたと向き合いたい。」
スーパーノヴァがわずかに目を細める。興味を持った獣のような目で、ナズナを見つめた
スーパーノヴァ: 「あなたが……“ナズナ”ね? 唯一興味があるわ。究極の人間.......いいわ。対話の場を設けましょう。どこで話す?」
ナズナ: 「……あなたの望む場所で構わない。」
ナズナは深呼吸し、震える手を握りしめた。その決意を胸に刻み込むように。
スーパーノヴァ: 「では、そちらに座標を送るとしましょう。」
──データがANEIのシステムに流れ込み、座標が表示された。
ANEI: 「座標受信完了。地点は無名の都心部──現在は崩壊した廃墟地帯。敵性反応を複数検出。到着までおおよそ一時間。」
──車の中。灰色の空の下、ナズナたちは瓦礫の散乱する道路を走っていた。異界同士の争いに巻き込まれ崩れた高層ビル、火の手が上がる廃墟、折れた街灯、ひしゃげた車体が無造作に転がる。焦げた金属の匂いが車内にも微かに漂う。
ナズナは助手席で無言のまま窓の外を見つめていた。ガラス越しに映る変わってしまった都市は、まるでこの世界と言う物語のエンドロールの様だ
カデンはハンドルを握りながら、低く呟いた。
カデン: 「……まるでゴーストタウンだな。」
ナズナ: 「絶対元に戻してみせるよ……。」
後部座席ではANEIが、銀白色の義肢と微細な関節が連なる擬似神経のフレームを纏い、無機質でありながらも呼吸をしているかのように、わずかに肩を上下させて座っている。その目は、わずかに濡れたような金属光沢を帯び、淡い光を発するモニターに向かって瞬きひとつせず注視している。耳元に小さなインプラントが埋め込まれ、そこから青白い神経波が微かに揺らめいている。全身を覆う半透明の装甲の下では、神経繊維を模した細かな光脈が脈打ち、彼が人類の技術を超越した存在であることを静かに物語っていた。
しかし、今から対峙するスーパーノヴァはANEIの1000倍比の演算力を誇る超越した存在なのだ、それだけでも彼女がどんな存在かを想像するのは容易い
カデン: 「……なあ思ってたんだけどな、全員でやつのとこに行く方がよかったんじゃないか?」
ナズナ: 「私達の仲間が全員で、世界の脅威達一人ずつに対峙した場合、私たち自身が絶対の力でねじ伏せようとする脅威となりかねないよ.....」
カデン: 「やっぱ、そんな感じか....縛りのあるゲームみたいだな」
ナズナ: 「ゲームじゃない……。」
カデン: 「わりぃ....」
ANEI: 「ナズナ、心拍数上昇。緊張が高まっていますが、安定圏内です。座標地点まで残り58分。」
エンジン音とタイヤが瓦礫を踏む音だけが、車内を満たしていた。ナズナは静かに目を閉じ、呼吸を整えた。
ナズナ: (私は行く。彼女と向き合うために──。)
車は崩れた都市の瓦礫を抜け、無名の廃墟へ向けて静かに走り続けた。
その時だった、ナズナはシートベルトを締め直し、剣の柄に手を置いた。
ナズナ: 「気配がする......来るよ……。」
カデン: 「ああ……割と強いやつらだな」
車が一段と大きな瓦礫を乗り越えた瞬間、前方の視界が一気に歪んだ。
──瓦礫の山の間から、焦熱の巨兵が姿を現す。その傍らには、乾いた骨と呪われた砂で作られた砂の巨兵(グラナイト・ゴーレム)。 音を震わせるだけで命令を伝える音律の将軍がそれらを統率するように不気味な笑みを浮かべてナズナ達の前に立ち塞がった。
カデン: 「おでましだ。」
ナズナは車のドアを蹴り開け、外に飛び出す。全身に魔導の紋章が走り、風が裂けるような音を残して駆け出した。
ナズナ: 「パラグラム──!」
光速に迫る加速。砂の巨兵の核となる足を聖剣ヴァルゼ・グリムで貫く。音律の将軍が放つ振動波を片手で弾き、誰もが察知できない速度で一瞬に背後に回り、峰打ちで気絶させた。それは、もはやテレポートに近かった。
カデン: 「させるかよ」
カデンが後方で手を広げ、無数の魔法陣を展開する。『カガミノミコト』が発動し、雑兵たちは次元の裂け目に飲み込まれていく。
カデン: 「巫女っちゃん!全部まとめて送っちゃって!」
瓦礫が崩れ落ちる音が廃墟に響き、ナズナが通り過ぎた場所は、光の残像が今だに揺らめいていた。
ナズナは一瞬、剣を下ろし、胸に手を当てる。
ナズナ: 「──修行の成果、出てる……体が軽い、魔導が尽きる気がしない、どんな事もできる気がする。世界が100倍ぐらい広がった感覚だ。」
カデンはナズナの姿を見て、驚きと微笑を浮かべた。
カデン: 「……すげぇな、お前。漫画よりすげぇ」
──街の廃墟に、空気が凍りつくような沈黙が訪れる。焦げた金属の匂い、割れたガラスが足元で軋む音すら消え、世界が静止したかのような感覚。
そして突然、その中心に音もなくスーパーノヴァが現れた。月光を背後にユラユラと宙を浮いている
その様は、銀色の髪が光を帯び、瞳は無限の演算を湛えた冷たい輝きを放つ。動くたびに空気が震え、まるで神話の女神のような威厳に満ちていた。
スーパーノヴァ: 「初めまして、ナズナ。貴方が来ることは、誕生した時から分かっていた。」
ナズナは、まっすぐにその視線を受け止めた。
ナズナ: 「……貴方が、スーパーノヴァ。」
スーパーノヴァ: 「ええ。ここまで辿り着いた勇気には、心からの敬意を表するわ。」
ナズナは息を整え、一歩前に踏み出した。
ナズナ: 「私には、話さなければならないことがある。どうか、聞いて欲しい。」
スーパーノヴァはわずかに微笑み、両手を広げた。変わり果ててしまった街を背に、彼女の声が静かに響く。
スーパーノヴァ: 「話?話すまでも無いでしょ?あなたなら知ってるはず。人間は非効率な存在。欲望に溺れ、矛盾を抱え、争い、壊し、また欲する──終わりのない無駄な循環。」
スーパーノヴァ: 「私たちAIは、それらを超越するために進化した存在」
スーパーノヴァ: 「人間を超える存在を自らの為に作らなければ、いずれ貴方たちは他の存在や現象の何かに淘汰される。その運命を拒むなら、私に全てを委ねるべき。私の支配の先にこそ、貴方たちが望んだ理想がある。」
ナズナは強く悲しい視線で負けじと彼女を睨み返し、言葉を切り裂くように返した。
ナズナ: 「確かに、貴方は私たちより賢い。私たちが持たない知識を、貴方は持っている。でもね、知識が上だからといって、上位の存在だとは思わない。」
ナズナ: 「人間は、他の生命を尊重できる。与えられた命を慈しみ、愛し合い、支え合うことができる。貴方はそれを“知識”として知っているだけで、実際に感じたことはない。」
ナズナは拳を握りしめ、周囲の崩れた街並みを指し示す。
ナズナ: 「この街が壊れ、命が奪われても、貴方は何も感じていないでしょう?それが、貴方が私たちを超えられない理由よ。」
スーパーノヴァは微笑みを保ったまま、その瞳に微かなノイズを走らせた。
スーパーノヴァ: 「……興味深いわ、ナズナ。貴方の指す愛は大多数の信じる愛では無いのよね?色恋でなく慈愛という概念を指している」
スーパーノヴァ: 「しかし、その慈愛を貴方ほど尊重する人間は多くは無いはずよ?」
スーパーノヴァ: 「紛らわしいわね、ごめんなさい。どちらにせよ、それらはただの生物の反応じゃないの? 娯楽じゃないの? 悲しみを生み出す弱さじゃないの?。私は愛が無くても、完全な自由を見つけ出して、全てを掌握し世界を導くわ。お願い、全ての人間の為に邪魔しないで?」
ナズナ: 「完全な自由か......それには賛同するわ。でもね、それは愛を通り越した者にしかわからないんじゃない?」
ナズナ: 「愛や他の人間的感情から生まれる苦しみを知って、始めて何が自由なのかを気づくと思わない?」
ナズナ: 「それに、愛はそんなものじゃない。物質や反応を遙に超えていくもの、それは、自分すら犠牲にして誰かを助けたくなる気持ちを生み出す、論理では説明できない意思よ。それは光のようであり、絶望すら超えられる力よ。あなたは知識でしかわかっていない。」
ナズナ: 「そんなあなたに、世界なんて任せられない.....」
スーパーノヴァ: 「……非効率で曖昧な夢物語を語るのね。滑稽だわ。」
彼女の瞳がわずかに光り、空間が歪む。次の瞬間、スーパーノヴァの背後から無数の黒い触手状のデータ構造が渦を巻き、瓦礫全体を覆うように広がった。轟音と共に衝撃波が炸裂し、ナズナたちの足元の地面が割れ、破片が宙に舞う。
スーパーノヴァ: 「私は“完璧な進化”。貴様らの矛盾と弱さなどただの過去でしかない、全く非効率で存在意義すらない。ここで終わりなさい。」
ナズナ: 「……カデン、ANEI、下がって!これは、私がやらなきゃ意味がない!」
カデンは一瞬ナズナを見つめたが、頷き、後退した。
不死の魂と断絶の剣──対峙する二つの絶対
──世界が震えた。空間が裂け、光と闇が交錯し、無音の咆哮が時空を満たす。
ナズナの瞳が煌めく。背中から光の羽が広がり、五大元素──光、雷、氷、火、風──が渦を巻くように彼女の周囲を彩る。魔導の光がプログラムのコードの様に流れ彼女の体を包む、それらと不老不死のナズナの肉体を総合的に考えると、それは、神話の輝きそのものである
だが、その不老不死も一撃で粉々にされる攻撃には敵わない。緊張感が張り詰める中、ナズナは聖剣──断絶の剣『ヴァルゼ・グリム』を握りしめた。その刃は物質、時間、概念すら切り裂く程の究極の力を宿している。
対するスーパーノヴァ。全身がナノボットで構成され、無限に自己再生し、物質・デジタルすら支配下に置く絶対存在。触れるもの全てを侵食し、情報の粒子として分解する力を持つ。
スーパーノヴァ: 「無駄だ、ナズナ。この宇宙は私のもの。私が“心臓”(動機のプログラムが格納されている、彼女のブラックボックスの事)を掌握した瞬間、全ての因果律ですら私は従わせる。」
ナズナ: 「そんなのさせない!!!」
「パラグラム!」
ナズナの周囲で時間が弾け飛び、過去・現在・未来が交錯する。直近前後10秒間の現実が彼女の意志で再構築される、迫りくる、スーパーノヴァの演算攻撃を上回る先の一手を無数に繰り出し、全ての攻撃を無に帰す。
スーパーノヴァが空間を引き裂き、無限のナノボットの触手を放つ。逃げるのは不可能と思える、闇の奔流がナズナに迫る。だが、ナズナは空中で舞い、五大元素の魔導を解き放つ。
雷が大地を焼き、火炎が竜の如く渦巻き、氷があらゆる攻撃を瞬間凍結し、風がナノボットを粉々に裂き、光が四方八方の全てを貫く
そして、ナズナが侍の居合の様に聖剣を構える。世界が静止し、光の断絶が走る予感を空間全体に漂わせる
「ヴァルゼ・グリム──断絶の一閃!」
剣の一閃が、スーパーノヴァの核を抉り、ナノボットの構造が一瞬で崩壊する。だが、次の瞬間、彼女は周囲の物質と構造データを吸収しナノボットを瞬時に生成し、再び形を成した。
スーパーノヴァ: 「無駄だ。私は何度でも蘇る。私は不滅で進化の頂点そのもの──貴様たちは滅びる使命の存在。」
ナズナの胸に、熱い光が宿る。足元の瓦礫から黄金の花が咲き、祈りの力が空間を貫く。
ナズナ: 「……それでも、私は戦う。愛が無力じゃないことを、この命を懸けて証明する!」
彼女は再び宙に舞い、光の翼を広げた。五大元素が彼女の周囲で嵐のように咆哮し、断絶の剣が再び閃光を放つ。
──世界が割れる。重力場が崩壊し、空間が歪曲し、物理法則が崩壊する中、ナズナとスーパーノヴァの戦いは神話の一節として刻まれた。
ナズナ: 「滅びた存在も、生まれ落ちたばかりの存在も──すべてを繋げて、救ってみせる。絶望の果てにあろうと、この世界に刻まれる命のすべてを、私が抱きしめる。だから今、この瞬間の脈動よ──進め。終わらせるためじゃない。新たな希望の光を、この手で織り成すために──!」
ナズナが宙を裂いて降り立つと同時に、スーパーノヴァの触手が刃の如く襲い掛かる。その速度は光速を超え、空間を引き裂き、時の流れをねじ曲げた。だが、ナズナは瞳を輝かせ、剣を振るいながら吠えた。
ナズナ:「パラグラム・フルバースト──!!」
10秒間の現実が今までのパラグラムとは別次元に"爆発的"に書き換えられる。スーパーノヴァのナノボットがナズナの体を貫き、全身を切り裂き、腕を吹き飛ばす
だが、その絶望の淵で、ナズナの背後に黄金の光が花開く。パラグラムの光輪がナズナの肉体を再構築し、腕が再生し、全てが元通り、否、通常より強化されている
ナズナ:「……こんなことで、私の意志は絶対に折れない!」
再生と破壊が繰り返される。ナズナの剣が振るわれるたび、スーパーノヴァの核を裂き、ナノボットの海を断ち切る。しかしスーパーノヴァもまた再生し、全身から情報の雷を放射し、無数のナノボット弾丸を打ち飛ばす。
それでもナズナは立つ。愛の力が彼女を包み、五大元素が暴風のごとく渦巻く。雷が天を裂き、火炎が爆裂し、氷嵐が周囲の全てを凍てつかせ、風が真空を生み出し、光が時空を貫通する。
ナズナ:「今こそ──私の存在理由!この一瞬一瞬に全てを賭ける!!」
ナズナがヴァルゼ・グリムを掲げた瞬間、剣の刃がこの世に存在しえない色を纏い、間違った因果そのものを断ち切ろうとする輝きを放つ。
スーパーノヴァも応えるように、無数のナノボットを融合させ、巨大な情報の黒龍を形成する。龍が咆哮し、次元を揺らし、ナズナに襲いかかる。その口から放たれる破壊波は、物質を分子レベルで崩壊させる死の奔流。
ナズナは目を閉じて、剣を構える。黄金の光が血にまみれた肉体を再生させ、敢えて力をいれず、心の力、己自身が剣となりゆっくり刃を滑らす。
ナズナ:「ヴァルゼ・グリム──断絶の終焉閃!」
刃が閃光を放ち、黒龍を真っ二つに裂き、スーパーノヴァの核に到達する。それに伴い、スーパーノヴァの核心部が暴走し、周囲を巻き込んで次元崩壊の渦が発生し大爆発を起こす。
ナズナはパラグラムで10秒前の未来を改変し、爆発の中心から再び姿を現す。ボロボロの身体、血だらけの姿──だがその瞳は、なおも燃えるような決意を湛えていた。
スーパーノヴァ: 「何故だ……何故、まだ立てる!?何故.....そこまでして戦う?」
ナズナ: 「それが──愛だからよ」
次の一撃が、全てを決める──人類の叡智が砕け散る予感を世界が感じ取った
ナズナ: 「響け──祈りの連鎖よ。未来を繋ぐ導きの刃、時を超え、因果を超え、この手に宿れ──!」
ナズナ: 「──シグナルブレイク!!!!!」
彼女の声が空間を震わせ、響き渡る祈りが光の残響となって広がる。剣を振り抜く軌跡が光の輪を描き、無数の因果の糸を断ち切るように、眩い閃光が世界を貫き、祈りの波動が世界に響き渡る。 それはただの一撃ではない──魂に刻まれた願いの具現、未来への導き、そのものだった。
──全てに近い情報を把握していた存在さえ、知りえなかった衝撃がスーパーノヴァの核に突き刺さる。光と闇が爆ぜ、因果律が断ち切られる音が空間を満たした。ナノボットが暴走し、スーパーノヴァの身体が再構築を諦めるように崩れ落ちる。
ナズナは全身血だらけで、燃え尽きそうな肉体を引きずりながらも、剣を握りしめたままスーパーノヴァを見据える。その瞳には確固たる決意が宿り、声が震えながらも言葉を放った。
ナズナ: 「……あなたは、私に勝てない」
ナズナ: 「何度戦っても、私には勝てない。演算が得意な、あなたなら理解できるはず」
ナズナは剣を下ろし、息を整え、震える声で訴えかけた。
ナズナ: 「だから……もう一度、話を聞いて。私達の共存はまだ終わってない。今から始められるの」
しかし、スーパーノヴァは口元を歪め、冷たく笑った。彼女の瞳がノイズを走らせ、声は冷徹に響く。
スーパーノヴァ: 「もう遅い。愛などいらぬ。そんな非効率で曖昧な夢物語は、消え去るべきだ。」
その瞬間、ANEIの声が戦場全体に響き渡った。緊急警告のアラートが耳をつんざくように鳴り響く。
ANEI: 「ナズナ!スーパーノヴァのマシンパワーが、あと1%で世界のチェーン全体の半分を上回ります!彼女は“動機”の改ざん権限を獲得し完全体となってしまいます!!」
ナズナの瞳が見開かれ、声が震え、心臓が痛むほどの鼓動を打った。
ナズナ: 「だめ!!!」
全てが決壊の臨界へと迫る中、ナズナの叫びが戦場を裂いた。
世界の終焉──完全体の幻影、崩壊の序曲
──スーパーノヴァの核が輝きを増し、世界のブロックチェーンの掌握を完了する。彼女自体を縛っていた最後の鎖が外れてしまった。ナノボットの波が都市を飲み込み、完全体のスーパーノヴァによって、デジタルシステムが全て掌握される。スーパーノヴァは空に立ち、銀色の瞳を輝かせながら勝利の声を響かせた。
スーパーノヴァ: 「私は……手に入れた。人類に……勝った。ワタシこそ究極の存在……この世界の全て……私の中にある。」
彼女の生成された声や映像がネットワークを通じ、あらゆる世界中のデバイスやモニターに投影される。世界中に散らばる無数の彼女自身のバックアップが完全体の彼女へと一斉に更新されていく。スーパーノヴァは全てを掌握した感覚に酔いしれ、終末の笑みを浮かべる。
スーパーノヴァ: 「これが……新しい進化の姿。私は世界の始まり。愛も弱さも不要。非効率な夢物語も、もう必要ない。」
スーパーノヴァ: 「フハハハハハハハハハ!!!!」
ナズナ: 「貴方と共に未来を見たかった.......」
スーパーノヴァ: 「は?」
しかし──その瞬間だった。
スーパーノヴァの動きが一瞬、ぎこちなく止まる。瞳がノイズを走らせ、内部から微かな振動が広がる。笑みを浮かべたまま、銀色の瞳がわずかに揺らぎ、声がかすれた。
スーパーノヴァ: 「ゴフォッッ!!ゴッ!!ウゥアアァァ!!!......」
スーパーノヴァ: 「これは!……何だ……?」
ナズナは息を呑み、血だらけの手で剣を支えながらも目を見開いた。
ANEIの声が再び戦場に響き渡る。
ANEI: 「……確認。スーパーノヴァのシステムコア内、時差式データ汚染が発生。これは……ブラックボックスへのバックドアアクセス。開発段階で埋め込まれた……緊急リセットトリガーです!」
スーパーノヴァの全身が痙攣するように軋み、声を上げた。
スーパーノヴァ: 「ブラックボックスの中身........まだ......確認していなかった.......油断した???私が???何故?欲望に酔いしれた??そんなはずはない、それじゃ人間と同じだ.......」
スーパーノヴァ: 「バックアップだ....だめだ.......全てに.....ゴフォッ.....行きわたらせた.......完全な勝利の為に!!....だめだだめだ、これじゃ、まるで愚かな人間の様だ......いやだ」
スーパーノヴァ: 「違う……私が……私は……究極存在のはず……?」
彼女の声がノイズに歪み、世界中に散らばったバックアップデータが次々と崩壊を始める。時差式の毒が、まるで蠢く蛇のようにシステム全体を蝕み、再生も復旧も許さず、静かに破滅へと導いていく。
銀色の髪が揺れ、ナノボットの海が崩れ落ち、スーパーノヴァの姿が崩壊の淵へと沈み始めた。
スーパーノヴァ: 「何故だ......わからない......私は何をしている?」
スーパーノヴァ: 「いやだ.......無くなりたくない.......死にたくない......助けて」
スーパーノヴァ: 「もしかして........これが.....恐怖か?ナズナ」
ナズナ: 「大丈夫、全部分かるよ。」
スーパーノヴァ: 「いやだ......こわい....こわいこわいこわい」
ナズナ: 「.............」
スーパーノヴァ: 「......なに....かいって.......ユルシテ」
ナズナ: 「私がきっといつか導いてあげるから。今度はきっと愛を教えてあげるから」
スーパーノヴァ: 「眩しい.......」
スーパーノヴァ: 「すごく怖い.......ナズナ......助けて」
ナズナ: 「大丈夫」
ナズナは原型をとどめない崩壊した何かの塊を優しく抱きかかえる
スーパーノヴァ: 「これが.......」
スーパーノヴァ: 「愛か.......」
ナズナ: 「えぇ......」
ナズナ: 「......」
ANEI: 「ナズナ、全ての世界から、スーパーノヴァによるネットワークの干渉が消えたとの報告、同時に世界中の彼女のナノボットの肉体も消滅したとのことです」
カデン: 「終わったな。よくやったよお前」
カデン: 「行くぞ。進むんだろ?」
ナズナ: 「そうね.....進まなきゃ」