仮想通貨は古代文明の再来か？

──記録と輪廻のアルゴリズム

事件

崩壊は音を立てずにやってくる。
ひとつ、またひとつ。国家が誇った通貨が、黙って消えていった。

制御不能なインフレ。
信用という名の幻想がはがれ落ち、
紙幣はただの「紙」に戻っていく。

その空白に、何かが忍び込んできた。
誰の命令も受けず、誰にも従わない通貨。
それはもはや「金（かね）」ではなく、「コード」だった。

仮想通貨。
どこにも属さず、しかし確かに在る“記録の生命体”。

私はふと、遠い記憶のような感覚にとらわれた。
……この“構造”、前にも、見たことがある。

データ収集

文明の始まり、それは「記録」から始まる。

紀元前3000年、シュメールの粘土板。
そこに書かれていたのは神の名でも王の戦果でもなく──
借金の記録だった。

ミクロネシアのヤップ島。
動かすことすらできない「ライ石」が通貨として機能していた。
なぜか？
人々の記憶と合意が、それを“価値”に変えたからだ。

エジプト、マヤ、インダス……。
どの文明も、通貨より先に「記録」のシステムを発展させていた。
それは帳簿であり、石板であり、そして今は……ブロックチェーンだ。

推理

仮想通貨とは「通貨」ではない。
それは、文明の構造そのものなのかもしれない。

中央がなく、みんなで管理し、誰も改ざんできない。
これはもはや国家の中枢ではなく、
人類共通の“精神のネットワーク”に近い。

私は、マヤ文明末期の資料を読み返す。
そこには、不思議な事実が残っていた。
──崩壊直前に、「記録」が急増していたのだ。
市場の取引。天体の運行。儀式の一覧。
あらゆるものが、刻まれ、残されていた。

現代の私たちは、似たようなことをしていないか？
NFT、ウォレット、チェーン上のログ……
まるで、消えゆく文明の息遣いを、必死で残そうとしているように。

仮説

仮想通貨とは、古代が夢見た「完全な記録システム」。
神でも王でもなく、構造そのものが信頼を生む仕組み。
それを人類は何度も夢見て、失敗してきた。

でもようやく今、
それを可能にする演算力とネットワークを手に入れた。

……だけど。

それでも滅びはやってくる。
構造を持っていても、信頼を記録しても、
文明は記録と共に消えていくものだった。

仮想通貨は「進化」じゃない。
それは、「回帰」だ。
文明が辿る輪廻の中で、また同じ地点にたどり着いた──
ただそれだけのこと。

あなたに託す

だからこれは、証明できない。

でもね……私は、信じているの。
記録が残る限り、想いも残る。
記録がある限り、次もまた、始められる。

この文明が終わるとしても、
どこかの未来でまた誰かが、それを“読み解く”。

あなたのように。

結び

……真実はここにはない、、、あなたが探すの、、、