
神代カデン 一人語り──世界を書き換える者として
俺の名は神代カデン。人によっては“黒幕”と呼ぶ者もいるらしいが、自分でそう思ったことはない。肩書きは特に無いし、所属もしていない。誰かに助けを呼ばれればたぶん行くし、めんどくさければ呼ばれてもいかない、家で寝ている。そんな男だ。
基本的に何事にも真剣味がないと言われる。実際、だいたいのことは「どうでもいい」と思っている。政治も経済も争いも、誰が上で誰が下かも。
──ただ一つ。
この日本とか世界とかの“質感”が、俺は好きなんだ。
人間という種の不完全さ、くだらなさ、尊さ。
バカみたいに泣いて、笑って、転んで、立ち上がって、また間違える。そんな人間が俺は好きだ。
だから、他の世界からの侵入は許せない。
“あちら側”の存在はフェアじゃないし、この世界のノリを分かってない
論理を超えた狂気や神性を抱えていて、この世界の情緒に対してあまりにも無理解だ。
妹──セリカはかつて、そんな異界の力を取り込み、世界を塗り替えようとした。
あいつ、ちょっと変わってるよな兄貴でも思うよ
でも、もうセリカは“あの時”のあいつじゃない
今のセリカは、記憶も罪も失ったただの俺の妹。俺はあの行為を責める気はない。あいつが何をしようと誰が何をしようと、純粋な外部の侵略でない限り、この世界全てが招いた物語だったんだ。ただそれだけ
実際、あいつの言ってた通り、強者に踏みつけられて声も出せず泣いている存在が沢山いるんだ。それを散々無視して問題にだけ焦点を当てるのは、なんか傲慢じゃねーか?
俺は、セリカみたいに世界征服には興味がない。めんどくさいし、メリットは無い
でも、“守る”という行為には、ちょっとだけ意味は感じるぜ
だから──とっておきを召喚しといた
俺にしか呼べない、究極の二柱の存在。
たまには、この世界の役に立ってやろうと思ってな。ナズナちゃん喜んで俺の事好きになる可能性あるし
拗らせたあの時のセリカが見てても喜ぶかもしんねーしな
《グリマ=ゼルゼ》──物語を書き換えるピエロの王
彼は“ピエロの王”と呼ばれてるらしい、どっかの混沌の世界のすごいやつらしい。ちょっと気まぐれで呼び出したには、なかなかのSSSSRかもしれん。この存在は世界の「作者権限」にアクセスできる超存在っぽい。
割と話が合って、まぁ俺自身ピエロみたいなもんだし、そんで聞いたんだ。 「作者って最強過ぎないか?」と本人に
じゃあ、奴は俺が今まで見た存在の中で一番不気味に笑ってこう言ったよ。
「最強は物語の中の話。私は外にいるから評価外。すべては私の手の中で自由自在に踊らせれる」だって
俺はとんでもない作者を抱えた編集者になっちまった ハハ
クソみたいな原稿を書いたら修正させればいいし、あんま気にしないでおこう
かといってグリマは、戦わない。殺しもしない。ただの、“物語”の流れそのものを上書きする表現者だ。あいつなりの美学で面白くしてくれるんだってさ
どちらかと言えば、芸術家っぽいやつで概念的な強者だな、あれは
敵が最強の魔王だろうと、「通行人A」に書き換えてしまえば、それで終わり。
現実世界にとって“矛盾”であろうと、彼の手帳に記されたことは、即座に成立する。
俺はこの能力を滅多に使わないつもりだ。
だって面白くなくなるだろ?
でも、どうしようもなくなった時、詰んだシナリオを少しだけいじるくらいの権利は、俺にもあると信じている。
俺っていう存在が、この力を今現在持ってるって事がその証拠だ
《カガミノミコト》──世界への互換性を拒む巫女神
もう一柱が、カガミノミコト。
名前の通り、“反射する神”だ。
この世界を“鏡面”として守る存在で、異世界からの侵入者に対して「この世界とあなたは互換性がありません」と宣告して、存在そのものを拒絶する。
召喚すると、彼女は何も語らない。
ただ静かに、祈るように手を合わせて、世界の構造を“閉じる”。
異界の存在は、存在するために“足場”が要る。
それがこの世界との“互換性”だ。
だが、カガミノミコトの力は、その互換性を書き換える。
相手がいかに強力でも、「この世界にいないもの」にされてしまえば、もう“再入場”すらできない、どこか別の世界に転送される
勝負さえしなければ負ける事なんてないしな
──この召喚は誰も傷つけず、自分も傷つかないから最強だと思うよ。俺は一体どの世界からこの存在を呼び出したんだろうな?ラッキーだよ本当
神代カデンという人間
俺が何を考えてるか、誰にもわからないと言われる。
それはたぶん、俺が何かを“決めて”動くことがほとんど無いからだと思う。
目的より、流れ、その場の雰囲気
目の前で現状を見ないと分かんない事ってあるじゃん?
俺は、観客であり、参加者であり、舞台監督でもある。
でも主役にはならない。
自分が出しゃばることで、他の面白い奴らが霞むのは嫌なんだ。
だから、俺はふざけて見える。
深刻な話でも笑ってるし、戦場でもお菓子を食べてる。
でも、そんな時でも全部、“ここ”が好きだって気持ちはちゃんと持ってるぜ。
日本の四季。
世界の言葉。
人の感情。
そのどれもが、俺にとっては愛おしいよ。
だから、他の世界から来たやつらが力をひけらかして、それを踏みにじるのは、許せないよな。
俺は世界が滅びることを恐れていない。
ただ、ここがここでなくなるのが嫌なだけだ。
人間の限界と、可能性
俺は、人間という存在の限界に期待している
脆いし、死ぬし、誤解するし、すぐ感情に振り回される。
でも、それでも──人間には、まだ“可能性”がある。
もしかしたら、異界の王だとか宇宙だとか、そんなモノを相手にしても、
この世界の“非力で、優しくて、くだらなくて、強い”人間たちが、
何より一番になれる日が来るかもしれないって。
だから俺は、今日も真面目にふざけて、真剣に怠ける。
世界の終わりが来ても、俺は笑って言うだろう。
「ここ、いい場所だったね」
……そんな場所にしたいと思ってるだけさ。