
「しるみど」──空に浮かぶ全眼の監視者
――5体集うと門が開く、目の“掃除機関”が来る夜に
1|事件──「空に、目がある。5つ、集まりつつある」
──そのスレッドは深夜3時、匿名掲示板のオカルト板に立てられていた。
【スレタイ】最近“しるみど”目撃情報多くない?
【1:名無しさん】
昨日、群馬の山中で見た。
空に“目”が浮かんでる。じっとこっちを見てた。しかも動かない。
ドローンとかじゃない。音もないし、動物が全部逃げた。
これって、“しるみど”ってやつじゃないの?
──しるみど? ナズナは、その言葉にひっかかった。
奇妙な音韻、意味を持たないようで、どこか呪術的な響き。
AIで世界中の神話・オカルト用語を走査したが、正確な語源は不明。
ただ、似たような音を持つ名前が、過去に“いくつか”報告されていた。
- Silmidar(古インド・ドゥラグ地方の密儀)
- Silmide(韓国の実在地名。古来「血の地」とも)
- Sil’mid(シベリア圏で記録された“空のもの”を指す音)
日本のネットロア界隈がこれらを「しるみど」と当て字したのか?
2|データ収集──“しるみど”に関するネットロアと共通症状
ナズナはネットを漁った。
現在確認されている“しるみど”の報告は130件(2023年〜2025年)。
そのうち20件は明確な情報があり、写真の共有もある(いずれも不鮮明で加工疑惑が少しあり)
共通点は以下の通り:
- 上空に浮かぶ見たことのない構造(ほとんどが夜間)
- “触手”のような物が無数に伸びる
- 全身に眼球のような物が多数存在(約30個)
- 見られている間、人は「声が出ない」「呼吸が浅くなる」「夢のような時間感覚」になる
- 24時間以内に消失する。
- 5体集まると“門”が開く
この“門”が、問題だった。
3|民間伝承──江戸時代に書かれた“邪なる目”
ナズナは国立民俗文献アーカイブから、古文書『忌目抄(いましめしょう)』を発見する。
記録は文政三年(1820年)、相模の山村で記されたとある。
天ノ雲割レ、黒ク禍々シキ影現レリ。
見上グルト、百ノ目ヲ持ツ鬼ノ如キ姿。
「五ツ集マレバ、此ノ世ノ門、開ク」ト長老申ス。
子等ヲ隠シ、鏡ヲ掲ゲ、目ヲ逸ラス儀ヲ行フ。
──明らかに現代の“しるみど”と符合する。
さらに奇妙なのは、文中に「彼ノ者ハ、遠キ天ノ道ヨリ、形ノ乱レヲ直ス為ニ来ル」とある点。
つまり、“異常”を見つけては修正に来る。
それが“しるみど”だ。
4|推理──しるみどは「古代の監視装置」である
ナズナはAI解析と並列照合を通じて、ひとつの仮説にたどり着く。
しるみどは、“この世界”の生物、未確認生命ではない。
また“宇宙人”でもない。
──「古代の監視カメラ」。
だがその目的は“記録”ではない。
危険な構造・存在・思想・技術を感知した時に、“その存在を回収・消去”する装置。
つまりこうだ:
- しるみどは“目”によって異常を検出
- 5体で「門」を生成(=構造修正空間)
- 対象を“門の向こう”に隔離 or 初期化
ナズナは呟いた。
「つまり、“私達が異常”と認識されたらどうする?」