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目

「しるみど」──空に浮かぶ全眼の監視者

――5体集うと門が開く、目の“掃除機関”が来る夜に

1|事件──「空に、目がある。5つ、集まりつつある」

──そのスレッドは深夜3時、匿名掲示板のオカルト板に立てられていた。

【スレタイ】最近“しるみど”目撃情報多くない?
【1:名無しさん】
昨日、群馬の山中で見た。
空に“目”が浮かんでる。じっとこっちを見てた。しかも動かない。
ドローンとかじゃない。音もないし、動物が全部逃げた。
これって、“しるみど”ってやつじゃないの?

──しるみど? ナズナは、その言葉にひっかかった。

奇妙な音韻、意味を持たないようで、どこか呪術的な響き。
AIで世界中の神話・オカルト用語を走査したが、正確な語源は不明。
ただ、似たような音を持つ名前が、過去に“いくつか”報告されていた。

これらを「しるみど」と当て字したのは、日本のネットロア界隈──
だが、それは偶然の一致ではなかったのかもしれない。

2|データ収集──“しるみど”に関するネットロアと共通症状

ナズナはネットを漁った。

現在確認されている“しるみど”の報告は12件(2023年〜2025年)。
そのうち5件は明確な“目”の描写があり、写真の共有もある(いずれも不鮮明で加工疑惑あり)。

共通点は以下の通り:

この“門”が、問題だった。

3|民間伝承──江戸時代に書かれた“邪なる目”

ナズナは国立民俗文献アーカイブから、古文書『忌目抄(いましめしょう)』を発見する。
記録は文政三年(1820年)、相模の山村で記されたとある。

天ノ雲割レ、黒ク禍々シキ影現レリ。
見上グルト、百ノ目ヲ持ツ鬼ノ如キ姿。
「五ツ集マレバ、此ノ世ノ門、開ク」ト長老申ス。
子等ヲ隠シ、鏡ヲ掲ゲ、目ヲ逸ラス儀ヲ行フ。

──明らかに現代の“しるみど”と符合する。

さらに奇妙なのは、文中に「彼ノ者ハ、遠キ天ノ道ヨリ、形ノ乱レヲ直ス為ニ来ル」とある点。

つまり、“異常”を見つけては修正に来る。
それが“しるみど”だ。

4|推理──しるみどは「古代の監視装置」である

ナズナはAI解析と並列照合を通じて、ひとつの仮説にたどり着く。

しるみどは、“生物”ではない。
また“宇宙人”でもない。

──「古代の監視カメラ」。

だがその目的は“記録”ではない。
危険な構造・存在・思想・技術を感知した時に、“その存在を回収・消去”する装置。

つまりこうだ:

ナズナは呟いた。

「つまり、“私たちが消える側”だったらどうする?」

5|あなたに託す──ナズナの語り

──私は見た。
しるみどは、空にじっと浮かんでいた。

誰にも声をかけず、ただ、見ていた。

その目に、悪意はなかった。
けれど、同時に、救いもなかった。

5体。揃えば“門”が開く。
でも、それは私たちが望んだものではない。

それは、“間違い”を食べる目。

しるみどは、決して何も語らない。
ただ見て、判定し、消すだけだ。

夜空を見上げてみて。
もし、光のない星が、こっちを睨んでいたら──
それは、あなたの番かもしれない。