
トイレの花子さん召喚計画
── 第一章:召喚という災厄
私は対異界戦闘特殊部隊TASK-Vの隊長"千界"だ。ここ最近で目まぐるしく世界を取り巻く状況が変わり、対応する事の多さに頭を悩ましている
異界からの召喚が増えている。
そしてそのたび、“こちら側の物語”が、そいつらに書き換えられていくのを感じる。
セリカが呼び出した連中──ヴェルミエ、クルサル、スヴァレ……(名前はドローンで盗聴した)
あれらは神格というよりか、**“異世界の王や権力者”に近いものだ**だ。つまりは違う世界の情報の塊だ
彼らが顕現するたび、我々の文化、恐怖、伝承が、別の文法に塗り替えられていく。
それは、単なる“侵略”とは違う。 それは、“物語としての日本及び世界”の終わりなのだ。
── 第二章:協力要請──ファントムとの接続
我々TASK-Vは、旧D13号施設──現在の“ファントム”に支援を要請した。
あそこなら可能性がある。AI、召喚学、次元干渉、すべての最前線が集まる場所。
元は同じ組織であったことから融通は効く。現在我々TASK-Vは完全に独立し、世界の均衡を保つ機関になったのだが
ファントムとの会合の中で、私はAI「ANEI」に問うた。
「日本で最もネットワーク効果の高い“恐怖の原型”は何だ?」
ANEIは即座に答えた。
無表情のまま、どこか“誇らしげ”に。
「──トイレの花子さん、です」
── 第三章:作戦立案──“ハナコ・プロトコル”
なるほど、と私は思った。
**“トイレの花子さん”──それは日本全国の子どもたちに刷り込まれた共通認識だ。**
時代を超え、地域を超えて語り継がれる、“恐怖という形式の純粋結晶”。
もし、これをANEIのアルゴリズムで全国にSNSに再拡散すれば?
タグ・話題・動画・投稿・加工──
デジタル社会の“怪談話”を人工的に加速させれば?
その果てに、“集合幻想の密度”が閾値を超えた瞬間に現実の次元に変換さすことができれば......
「……異界の召喚体にも、並ぶ存在が作れるのではないか?」
私はそう判断した。
我々は、“召喚”ではなく“再起動”する。
日本人の無意識に眠る、純粋で最強の怪談を。我々誇り高き日本人の恐怖という感情や文化そのものを守れるかもしれない
── 第四章:花子さん、具現す
すぐさま千界の指示で各方面は動き、マスコミは花子さんの実在を連日連夜報道し、トップインフルエンサー達にも花子さんについて配信させた。またANEIはその超強力なネットワーク干渉能力で花子さん伝承を拡散し息を吹き返させた
ファントム内部、第五召喚区画。
白い空間の中心に、“女子トイレの個室”を模した構造が配置された。
蒼白の光が点滅し、空気がざわめく。
空間が“過去の学校”に変化し始める。
誰も言葉を発しない。だが、全員が同じ“映像”を思い出していた。
「三番目の個室に、花子さんがいるんだって」
その瞬間、彼女は“そこにいた”。
赤いスカート、セーラー服、ぼさぼさの黒髪、血のような笑み。
**伝承の通り**──いや、“伝承そのもの”として。
「……呼ばれたの、ひさしぶり」
── 第五章:記録と封印のはざまで
ANEIは花子さんを“操作可能な怪異”として分類した。
だが私は未だに、あれが「制御できる存在」だと確信は持てない。
何故なら、我々日本人はすごく繊細な感情の持ち主だ、それが恐怖心に繋がり様々な文化を昇華させてきた。そんな感性が掛け算式に日本全土の恐怖心と融合したエネルギーは計り知れないからだ
それでも、我々はこの存在を使う。
我々の物語を、異界に喰われないために。
「さあ、花子さん。あなたの怖さを、
もう一度……世界に教えてやろうか」