
不屈の女王ナズナ vs 最果てのナイト
1|依頼
ある日、ナズナのもとに届いた一通の封書。封蝋が施され、紙は羊皮紙のように古く、文面には崩し字にも似た古ヨーロッパ調の文字でこう記されていた。
汝、琥珀のQueen。他の王からキク
我、鎧にて在り。名をナイト。
最果ての人にツカエルモノなり。
タタカエ。ワレとタタカエ。
汝が知を持ち、我が刃に耐える者か否か、試すべし。
場所:任セヨウ
秘宝、所望あらば与えん。
剣──ラズナリア。
汝が承諾をもって、我、目覚める。
ナズナは目を細めた。『ラズナリア』──その名前に、彼女の探究心は揺れた。好奇心、それは知性の根。ナズナは、自らその旧王立美術館の“騎士の間”へと足を運ぶことを選んだ。察するに遙昔の霊体?何かに憑依して戦うと推論する
2|邂逅
静まり返った旧王立美術館。人払いされたその空間に、ナズナはただ一人で踏み入った。
展示室中央に立つ、黒鋼の鎧。ナズナが半歩踏み出した瞬間──鎧が、ゆっくりと動き出す。剣を抜き、構えた。
我が名はナイト。我が主に代わり、汝を試す。
魔法は使わぬ。我は剣の者。潔き刃にて問う。
その声は澄んでいた。忠義に篤く、誇り高い。ナズナは剣──否、刃のない高硬度合金製の『盾剣』を手にした。
「なら、私も正面から答えるわ」
3|一撃勝負
ナイトは、静かに構えた。ただの一太刀。それで終わらせる覚悟。
ナズナは、動かない。構えもしない。立ち尽くしたまま、目を閉じる。
(私は逃げない。受ける。たった一度、その刃を──)
舞台は、美術館。ナズナが指定した理由、それは「経年劣化」。ナイトの剣も、鎧も、かつての展示物。彼の誇りと技術が、時の流れの中で傷んでいるそれらとギャップを生むことをナズナは計算に入れていた。
──そして、ナズナは自作の“盾剣”を携えていた。刃のない、だが超高強度の金属製。防御に特化したそれを、ただ静かに構える。
4|衝突
ナイトの剣が閃く。風を断ち、時間すら歪むような速度。
ナズナは、受けた。全身を通じて衝撃が走る。常人なら足の骨が砕け散るが、抜群の身体能力と的確なタイミングの衝撃の受け流し、つまりはセンス、その一点で──耐えた。
剣が、かすかに音を立てて“刃こぼれ”を起こす。ナズナは見逃さない。
──そこ。
彼女は即座に下段へと身体を沈め、自らの盾剣を、刃こぼれした箇所に正確に叩きつけた。
刹那、響く破砕音。ナイトの剣が、真っ二つに折れた。
その体勢は崩れ、鎧は軋み、静かに膝をついた。
5|終幕
「……見事」
ナイトは静かに、剣の柄を地に置き。その頭を垂れた。
これぞ王。これぞ知の剣。
我が主に語ろう。“真のQueen、琥珀の嬢王、不屈の嬢王、ここに在り”と
無礼を、詫びる。
ナズナは息を吐き、盾剣を背に回す。
「約束の品を」
ナイトは、後方の台座から、一振りの剣を差し出す。それは、緻密な紋様が走る、銀と琥珀の融合されたような刀身。
──剣《ラズナリア》
最果ての人にも、この知恵を。見せねばなるまい
その言葉に、ナズナはうっすらと笑った。
6|ナズナの語り
これは力の戦いじゃない。
理解と設計の勝利。
少しのミスも許されない命がけの勝負
信念の戦い
彼に敬意を払うは