世界線変動率:0.000000

萌え

その日、ナズナはアイドルになった──一日限りのステージと消えた少女の謎

プロローグ:その依頼は、想定外すぎた

朝、ナズナはいつものようにデータベースを眺めながら、冷えたミルクティーを口に運んでいた。 今日は何か事件はあるだろうか──そんな期待と少しの退屈を抱えていたところに、突然、部屋のドアが乱暴に開かれた。

「すみませんっ! どうか、お力を貸してください!」

泣きそうな顔をした若い女性が飛び込んできた。芸能プロダクションのマネージャーだという。話を聞くと、今夜行われる全国ライブ配信イベントのメインアイドルが、直前になって突然姿を消したらしい。

「でも、なぜ私に……?」

ナズナが首を傾げると、マネージャーは真剣な表情で言った。

「探偵に彼女の依頼をしようとしたら、サイトにあなたが出てきて閃いたのよ!あなたしかいないって!彼女は今日中には見つからない可能性が高いし......無謀だと分かってるけど、このままじゃ.......」

「それに、あなた……あまりにも可愛い!探偵にしては可愛すぎる!アイドルになるべきよ!!一目見た瞬間思ったわ。」

ナズナは熱意にタジタジとなり断れなかった。しかし、隠された5%ぐらいの感情は一人の女性.....いや、女の子として何か心に湧き出る魔法少女願望があった可能性もあるが、本人が肯定することは何よりも起こりえない

第1章:アイドル衣装、着用。

数時間後。

鏡の前には、ステージ用のドレスに身を包み、髪にリボンを結んだ女性がいた。 探偵帽とコートやヘッドフォンは外され、その代わりにアイドルらしいキラキラのアクセサリーがあしらわれている。

「……私、なんでこんなことに……」

ナズナは深くため息をついた。 でも、ここで逃げるわけにはいかない。 これは依頼だ、彼女の性格は「受けたからには全力で応える」タイプなのだ。

ライブ会場はすでに観客で溢れかえっている。SNSでは初めは苦情のオンパレードだったが、ナズナのビジュアルが公開されるとみんなの認識が徐々に変わり、一日だけの代理アイドルという斬新さも話題になり「代理アイドルって誰!?」「可愛すぎてやばい」と大バズリした。

第2章:歌いながら、違和感に気づいた

本番が始まる。

ナズナはリズムを掴みながら、振り付けを忠実に再現する。 歌声はまだぎこちないが、その未熟ながら一生懸命踊る比類なき可憐な魔法少女アイドルに観客は歓声を上げ、会場の熱はどんどん高まっていく。

だが、ナズナはステージに立ちながらも、ふとした違和感に気づいていた。

(……舞台裏の動線、なぜあんなに警備が薄いの?)

ナズナの頭脳が、次第に“探偵モード”へと切り替わっていく。 このライブには、何か仕掛けがある──そう直感した。

第3章:消えた本物のアイドル

幕間で控室に戻ったナズナは、失踪したアイドル・アユの私物を確認していた。私物を残して失踪したのは相当緊急だったのかともナズナは考えていた

ポーチのそこに隠された「クラウドアクセスカード」。 ナズナは即座にANEI(AI)のデバイスで解析を始め、そこに残されたログを読み解く。

そこには──

が残されていた。

(つまり、アユは……告発のために、ライブに立つはずだった)

だが、それを誰かが阻止したのだ。

第4章:ライブ後半、真実を語るアイドル探偵

後半のステージ。 ライトが当たる中、ナズナはマイクを握った。

「……この場をお借りして、皆さんに一つ、お話ししたいことがあります」

観客はざわつく。

「今日皆さんが楽しみにしていたライブのアイドル"アユ"は実は失踪しているのです」

観客席、舞台袖すべての人間がどよめきだす

「私はそれを調査している探偵で、この事件の真実を見つけました」

ナズナを取り巻く全員のどよめきが最高潮になる

「彼女を助けるには、彼女のファンの皆さんの力が必要です。今日私は短い時間だけど、みんなの前で踊って分かったは、彼女はあなた達なら信頼できると思って、ここで告発をしようとしてたの。それを誰かに見破られ連れ去られたの」

全員の怒りが爆発し、アユちゃんを返せー!!!と怒号が飛び交う

そして、ナズナはその場で、企業の不正の卑劣さとアユの勇気について熱く語り。会場全体を取り込んだ

「本当のステージは、いつだってファンのみんなと“真実を歌う場所”であるべきよね♡」

誰もが静まり返った。 その幾千ものライブや握手会をこなし、様々な境地を乗り越えたアイドルが口にする境地を、目の前の代理の素人アイドルが掴んでいると言う、恐ろしい可能性の塊に言葉を失ったのだ

エピローグ:一日限りのスター、永遠の記憶

ライブの後、アユは無事に保護された。ファンやアユを愛するマネージャーなどの裏方の協力もありすぐに見つかったらしい。 スポンサー企業には内部調査が入り、事件は公に報道された。

ナズナはというと──

「もう、アイドルなんて絶対やらない……」

「恥ずかしいし.....緊張するし....笑顔作るの大変だし.....踊り疲れるし.....私はやっぱりああいうのは向いていない」

とぼやきながらも、ネットに拡散された彼女のライブ切り抜き動画を自分で見ながら、時折まんざらでもない顔をするのだ。「奇跡の代理アイドル」「探偵アイドル」「ナズナ神」といったタグを見つけては、枕に顔を埋めて呻いているのを誰も知らない(言うな)

──これが、一日限りの伝説のアイドルの都市伝説の記録だ。