探偵ナズナ、意識に作用する寄生虫との対峙──寄生は妄想か、それとも?
1. 事件:体の中で、何かが動いている
依頼は、奇妙なメールからだった。
はじめまして。私の中に虫がいます。毎晩、声が聞こえます。“お前の意志じゃない、俺がお前を動かしてるって”って。医者は寄生虫のせいだと言います。でも、薬を飲むたび、私の中の“わたし”が、消えていく気がするんです
発信者は17歳の少女、千歳(ちとせ)。数ヶ月前から“誰かに身体を支配されている感覚”に悩まされているという。
病院では精神科への紹介と同時に、脳内寄生虫の疑いを理由に抗寄生体薬を処方された。
だが、ナズナは違和感を抱く。「彼女は、自分が操られていると感じている。でもその恐怖を、誰かに“思い込まされている”洗脳の気配がある」
寄生虫なのか、それとも、もっと別の何か──?
2. データ収集:本物の寄生か、偽の治療か
ナズナはまず、彼女の“診断記録”をハックして調べた。
医師は「行動の変化」「性格の逸脱」「無意識の発話」などを寄生虫による神経干渉の症状として解釈していた。
薬の成分には、確かに駆虫薬の一種が含まれていた。しかし同時に、微量の“神経伝達調整剤”が処方されていることを突き止めた。
「おかしい……これは、精神を落ち着けるというより、“自我を抑える”タイプのもの」
さらに少女に協力を得てスマホを借りログを分析すると、
- 眠っている間にスマホの履歴が増えている
- 自分の知らない写真が増えている
- 夢の中で、誰かに“命令される”
という“意に反しての行動”が並んでいた。
一見、解離性障害かのようにも見えるが、彼女の場合少し違う気がする。
「これがすべて彼女の妄想ではなかったし“誰かが彼女を誘導している”気がする……」
3. 推理:本当の寄生は、どこにある?
ナズナは医師の診断ログをハックした。
その医師は、過去にも複数の患者に「寄生虫の可能性」を示唆していた。
しかも、患者達はいずれも意思に“従順”になっていき、やがて自己決定を喪失していく傾向があった。
つまり、これは“医学”という名の仮面をかぶった洗脳ではないか。
薬に含まれる成分も、脳の判断機能を鈍らせ、疑問を抱かせなくする構成だった。
寄生虫は──いなかった。
だけど、彼女の中には確かに、“他人の声”がいた
それは、医師という立場から静かに埋め込まれた“洗脳という名の寄生”。
4. 仮説:妄想の正体と、心の力
ナズナは千歳に再度会いに行った。
あなたの中にいた“虫”は、医師が作った“洗脳の言葉”だったの。
それが本物に感じられたのは、薬とそう思い込まされるようしむけられていただけ」
千歳は震えていた。
でも、ほんとうに……私、誰かに動かされてる気がして。自分じゃないみたいで
ナズナは静かに頷いた。
でもね、ホントは誰にでもある感覚なの。自分の中の“自分でないもの、言う事を聞いてくれない感情”全部自分の思い通りに何かできていないの。私もそれと向き合うのは怖かったりもする。でもそれだけでは無くて、それを客観的に見る理性がちゃんと人にはあるのよ。振り返る力がある限り人は飲み込まれはしない
つまり──それも、あなたの一部なの
彼女はしばらく沈黙した後、ふと笑った。
……じゃあ、それを抱えて、生きていくこともできる?
ナズナは言った。
もちろん。受け入れることができたなら、“その声”は、あなたを脅かさなくなる。もしかしたら、あなたの力にさえなることもあるわ。
5. あなたに託す(ナズナの語り)
寄生虫はいなかった。
けれど、誰もが“自分の中にある何か”に怯える瞬間がある。
自分自身を受け入れるということは、思っているよりも難しい。
みんな、それをしないための理由を上手に見つけたりもする。
でもね、それを抱きしめることができた時──その“声”は静かに、消えていき人は成長する
全てを含めた関係性があなた自身なんだよ。