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完全

神代セリカからの手紙

親愛なるナズナちゃんへ

お元気かしら。
突然のお手紙、驚かせてしまったならごめんなさいね。
でも、メールよりお手紙の方がお友達っぽいでしょ? ふふ

あの「失踪事件」の後は、いかがお過ごし?
512名の生徒と職員が、忽然と姿を消して
報道も、記録も、現地の痕跡すらも存在しなかった、すべてが真っ白なワルツ......

とても美しかったわね。

けれど、残念ね.....あれは実際には起きていないの。
あの校舎は、とっくに廃校になっていたもの。
生徒も、教師も、あの朝も──すべて、あなたを“招く”ために用意した舞台。
つまり……少しだけ、騙してしまったわね。
ふふ、ごめんなさい。

でも、私はそんなに悪い子じゃないのよ。
ただね、試したかったの。
あなたという人を、私は危険視していたから。
唯一、“私を止めうる存在”──そう考えている人がいるみたい。

だけど私は、自分のことを信じてるの。
だってね、世界が見えるのよ。
未来も、過去も、人の心も、死の先までも。

まるで、ひとつの物語の全ページが、初めから手のひらにあるように。
それはきっと、“完成されている”ということだと思うの。
ねえナズナちゃん、私って、本当に“人間”なのかしら?
ふふ……どう思う?

もう、私はあなたたちの“迷い”とは、全く別の世界にいるの。
あなたはその中には含まれていないけれど……
だからこそ、みんなを導いてあげなきゃって思ったの。

人間って、本当にくだらないことで悩むのよね。
未来を恐れて、形のない不安に泣いたりして……
あまつさえ、自分の欲望を満たすために、時にとても醜くなる。
下品な笑い方をしながら理性の無い事を平気でする事もある
 勿論、皆がそうでは無いし、ただの私の意見よ。
でも、そんな世界の片隅で泣いてる人を私は無視できないの

だから、私が世界を作り変えてあげるの。
幸福で、静かで、美しく、何も間違えない世界を。
それができるって、もう確信があるのよ。
……だから伝えたかったの、あなたに。

前は騙してしまったけど。
あなたは、唯一の友達だと思ってるから。

──セリカより

追伸

ナズナちゃんが恐れていた、あの“くだらない石柱”──
私は、全てくぐったわ。
ふふ、予想通りだった。五番目を通るとね……

“あれら全ての支配権”が、私の中に降りてくるの。
まるで、女王様になったみたいな気分だった。

今度、あなたにも“見せてあげる”わね。
私の、美しくなった世界を──。