
空
空は真っ青で、どこにも境界がない。
上も下もない、ただ空間がそこに広がっている。
雲は薄く、青い風でなぞったように裂け、光をまとって揺れていた。
この世界には他には何も存在しないかのように感じる
僕は、そこを突き抜けていく。
金属の翼と、燃えるような推進剤。機体は、けたたましく透明を突き破る
エンジンは、地鳴り。
リズムを刻む、低くて重い、鼓動のような轟音。
それはもう“音”ではない。
空を押し返す力、空気をねじ伏せる“意思”だ。
キャノピー越しに、地平線が見えた。
そこは、ただの境界じゃなかった。
青と橙が、ゆっくりと交わりが完全に溶け合い光の帯のように、空と地を繋いでいた。
夕焼けか?
あの光は、優しい終わりだ、どこまでも遠く感じる終わり。
今この一瞬を、僕はただ黙って、見つめていた。
スピードの中にいると、過去も未来も、どうでもよくなってくる。
空に包まれていること。
粒子の宝石を突き抜けていること。
ただそれだけが、真実だった。
風が機体を叩くたびに、僕の心臓が震えた。
それが怖くてじゃない。
ただ湧き上がる。
エンジンの唸りと共に僕はこのすべての中で存在する
涙。
僕はまだ帰らない。
まだ、青が深い。
まだ、風がやまない。
まだ、、、