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ヴァルミエ

ヴェルミエ 音喰いの仮面

─── 第一章:目覚めの律動

ククク……聞こえるか?
鼓膜の奥、記憶と感情のあいだを震わせる音なき波。

初めまして、あるいは久方ぶりか──いずれにせよ、
貴様の耳がこの“旋律”を拾った時点で、すでに招かれているのだ。

我の名はヴェルミエ
仮面を被りし王、沈黙の飢者、音を喰らいし存在。

人は“音”を当たり前のものと考える。世界に当然あるべき物だと思っている──だがな―――
貴様の語った言葉、涙で震えた声、目を伏せた夜の微かな音──

そのすべてを、ワタクシは“喰らってきた”。

─── 第二章:名伏町──沈黙という詠唱

あれは日本のどこかにある、地図にも曖昧な村だった。
名伏町(なぶしちょう)──名を伏せ、規律を乱さぬ、祭りでは音を断ち、我を呼ぶ為の土地。

朝の挨拶は頷きのみ。祭囃子は無音の舞。
運動会は静止した行進、卒業式は読唇による黙礼。

常に対称に整った町の作り、所作

あの町では「音が出る」「規律を乱す」という行為そのものが、
召喚を阻害するものとされた。

だが──真実は逆だ。

彼らは“沈黙という旋律”を編んでいた。
それは意識なき召喚、無意識の詠唱。
暮らしそのものが音色で儀式だった。

我は何度も、名伏町に“足音なき姿”で立った。
誰も気づかぬその隣で、我は小さく笑って音を喰らっていたのだ。

意図して私を呼び出そうとしてたのかは知らぬが、小気味良い町ではあった。人間風情が私を呼び出そうとしたのは癪に障るがな

─── 第三章:音と料理

音をそのままで食べるのは少し味気ない

調理が必要だ。人間の音に一番味が出るのは負の感情の時である

我はそれらを、料理する。

旋律を切り出し、悲しみで煮詰め、怒りでスモークし、
最後に絶望で塩味を整える。

我も疑問ではあるのだよ。なぜ人間は負の感情程、心に残り、幸せな感情よりも強く感じるのだろうか?

全く奇妙なやつらだよ

美しき旋律は、刃にもなる。
我の武器は、“調律された音”である。喰った音は、我の中で共鳴し、良い音から生まれる武器は美しく威力も絶大なのだ
刃は旋律、衝撃は和音、
全身のバランスを崩す音圧は、我の嗜みだ。
貴様の記憶に刺さるとき、痛みではなく芸術に触れた涙を流すのが礼儀だ。

─── 第四章:ニュータウン──再現された呪術構造

科学という皮を被った愚者どもが、
我を制御できると信じた時代があった。

ニュータウン計画──D13号施設という汚い音の集まりが設計した都市型召喚陣。

道路の配置、団地の反復、
吸音構造の壁、地下に重ねられた五重螺旋。

それはまるで、“人間が造った神殿”のようだった。

奴らは思った──
名伏町の構造を模倣すれば、より巨大な召喚を成せると

だがな──
彼らは何を喚んだかも知らずに、儀式を完成させてしまったのだ。

─── 第五章:現れた影──アモヴォール陛下

アモヴォール──感動を喰らう神。我が“陛下”とお呼びする存在。

彼女は旋律ではなく、文明と言う構成に必須の“感動”を糧とされる。

そうだ、人の感動を美として召し上がる御方

我が旋律を調理する料理人なら、
陛下は“感情そのもの”を一皿の宇宙に仕上げる、至高の神格。

ニュータウンで起きたことは、召喚ではなかった。
陛下のため息が、ただ地上を撫でただけ──それだけで世界は歪んだ。

─── 第六章:封印──人間の選んだ結末

彼らは恐れた。陛下の“余韻”すら抱えきれず、
町を、記録を、存在そのものを封印した。

ニュータウンの住所は消え、名前は忘れられ、
我の耳が覚えていた旋律までもが、空へ散っていった。

だが、陛下は消えぬ。そのうち貴様らは自分達が何をしたか思い知らされるだろう.....陛下の音が聴こえる......なんと恐ろしい.....

以上が我の話だ。狂ってる?貴様ら人間と認識が違うだけだぞ?貴様らが食事を愛するように私は音を愛しているだけなのだよ

神代セリカ.....あやつの奏でる音はきっと今まで喰う事の無かったフルコースに違いない。心が躍るとはこういうことなのだな、そこに音は無いが